「ねぇ、どうしてこんな仕事やってるの?」
いきなり、彼女は責めるような口調で問いただす。
「そのうち、自分も死にたくならない?」
僕は答えない。必死に口を閉ざす。
きっと今、口を開けたら、本音を全て吐いてしまうに違いない。彼女は、僕から目を逸らさない。いつまで経っても。
「死にたいんじゃないの?」
彼女は唐突に微笑む。完全に不意打ち。
「誰かと一緒に?」
肯く。小さく、彼女にしかわからないように。きっと口をぽっかり開けていた。きっと間抜けな顔だった。
「例えば、私と一緒はいや?」
首を振る。彼女と死ねるのなら、本望だ。
海が見える崖のぎりぎりの淵まで走る。彼女が僕を突き落とす。僕は無意識に彼女に手を伸ばす。彼女は振りほどこうとする。
意識が途絶えるその時、僕は確実に彼女の首を絞めていた。
そう、君ひとりだけ生かすなんてそんなことしないに決まっている。
共有したのは死の世界?
いいや、楽園への切符さ。